最高裁判所への要請署名のお願い
平成21年7月29日,滋賀県の愛荘町立秦荘中学校の柔道部の練習において,当時中学校1年生であった村川康嗣が亡くなりました。
康嗣は、柔道初心者で体力もなく、受身の技量なども未熟でした。事件当日、顧問教諭は、30度以上の蒸し暑い体育館の中で、部員たちに3時間半にわたり過酷な練習を課していました。
初心者の康嗣は,練習途中に頭を打ち、水を飲みにいく方向を間違うなどの脳損傷特有の症状を既に発症しており、他の生徒から見ても、既にフラフラで受け身もとれない状態でした、
顧問は,上記事実に気づきながら、康嗣の脳に異常が発生している事を見過ごし、またそのような状態の中で過酷な練習を強いられ、疲弊しきって声も出ない状態であったにもかかわらず、「声を出していない」という理由で康嗣一人を残して練習を続けさせたのです。
その結果,康嗣はただ一人、かわるがわる上級生に投げられ続け、そしてついには顧問自らが初心者には受身が取りづらいとされる返し技で(大外返し)で、力の加減をせずに投げ飛ばしたことにより、頭蓋内の損傷が拡大し急性硬膜下血腫を発症したことにより、その生命を断たれました。
大津地方裁判所は,柔道部顧問の過失を認めました。しかし,「国家賠償法の解釈」により「公務員個人は被害者に対して民事責任を負わない」と判断しました。大阪高裁においても、同様の判決が出されました。
しかし、常軌を逸した「しごき」「リンチ」と評価すべき過酷な練習を子どもに課した人間が、「公務員である」という理由で、民事上の責任を免れるのはあまりにも不合理です。
一方、私立学校でこのような事件が起きた場合には、加害教諭個人の責任が認められています。私立学校の教諭は責任を負い、公立学校の教諭は責任を負わないというのは、あまりにも不公平です。
しかも、最高裁は、このような不平等な扱いをすることについて、これまで何ら合理的な根拠を示していないのです。
これまで、中学・高校における柔道事故の死亡者は、1983年度から2011年度の29年間で、実に118件に上ります。 たとえ死亡に至らなくても、後遺症が残る事故が1983年度から2010年度の28年間で284件も起こっています。
年間平均すると4人以上の死亡者、10人以上の後遺障害者を出している事になります。その多くが、指導者による過酷な練習によるものであり、指導者の安全意識の欠除によるものです。
公立学校の教諭であれば、何をしても「公務員」であるという理由で、民事上の責任を免れられるのであれば、今後も同じことが繰り返され、同じように公務員個人の責任が問われないままとなってしまいます。
私たちは、最高裁判所が本件に真摯に向き合い、本件顧問の責任を明確に認める判決を下されることを求めます。
<不当な判例の壁を打ち破ることに、お力をお貸しください>
最高裁判所は一貫して公務員個人の不法行為責任を否定していますので判例変更がなされるのは,とてもハードルが高く、原告及び弁護団は,多くの方のご協力をいただきながら、これまで主張立証を充分尽くしてきました。しかし,それだけでハードルを乗り越えるのは極めて困難な状況にあります。
そこで,是非とも,皆様に署名へのご協力をお願いいたします。
最高裁を動かすには、皆様のお力が必要です!
是非、ご協力のほどを宜しくお願いいたします。
<署名のお願い>
以下より、署名用紙のPDFをダンロードいただき、弁護団までご送付をお願い致します。(まことに申し訳ございませんが、郵送料はご負担を賜りますようお願い致します)
署名用紙ダウンロード(PDF)
署名用紙は可能な限り、平成26年7月25日までに届くようお送りください。
また、以下のサイトでオンライン署名活動も行っています。
http://goo.gl/QaLpqf
<今後の活動スケジュール>
平成26年7月27日(日)午前 都内にて記者会見
平成26年7月27日(日)午後 都内にて集会
平成26年7月28日(月) 署名用紙を最高裁判所に提出予定
集会につきましては、詳細が決定しだいご案内させていただきます。
最高裁判所への署名提出日の翌日、7月29日は、康嗣の命を絶ったこの事故の起こった日から5年目となります。
どうか、皆様のご協力をお願い致します。
平成21年7月29日,滋賀県の愛荘町立秦荘中学校の柔道部の練習において,当時中学校1年生であった村川康嗣が亡くなりました。
康嗣は、柔道初心者で体力もなく、受身の技量なども未熟でした。事件当日、顧問教諭は、30度以上の蒸し暑い体育館の中で、部員たちに3時間半にわたり過酷な練習を課していました。
初心者の康嗣は,練習途中に頭を打ち、水を飲みにいく方向を間違うなどの脳損傷特有の症状を既に発症しており、他の生徒から見ても、既にフラフラで受け身もとれない状態でした、
顧問は,上記事実に気づきながら、康嗣の脳に異常が発生している事を見過ごし、またそのような状態の中で過酷な練習を強いられ、疲弊しきって声も出ない状態であったにもかかわらず、「声を出していない」という理由で康嗣一人を残して練習を続けさせたのです。
その結果,康嗣はただ一人、かわるがわる上級生に投げられ続け、そしてついには顧問自らが初心者には受身が取りづらいとされる返し技で(大外返し)で、力の加減をせずに投げ飛ばしたことにより、頭蓋内の損傷が拡大し急性硬膜下血腫を発症したことにより、その生命を断たれました。
大津地方裁判所は,柔道部顧問の過失を認めました。しかし,「国家賠償法の解釈」により「公務員個人は被害者に対して民事責任を負わない」と判断しました。大阪高裁においても、同様の判決が出されました。
しかし、常軌を逸した「しごき」「リンチ」と評価すべき過酷な練習を子どもに課した人間が、「公務員である」という理由で、民事上の責任を免れるのはあまりにも不合理です。
一方、私立学校でこのような事件が起きた場合には、加害教諭個人の責任が認められています。私立学校の教諭は責任を負い、公立学校の教諭は責任を負わないというのは、あまりにも不公平です。
しかも、最高裁は、このような不平等な扱いをすることについて、これまで何ら合理的な根拠を示していないのです。
これまで、中学・高校における柔道事故の死亡者は、1983年度から2011年度の29年間で、実に118件に上ります。 たとえ死亡に至らなくても、後遺症が残る事故が1983年度から2010年度の28年間で284件も起こっています。
年間平均すると4人以上の死亡者、10人以上の後遺障害者を出している事になります。その多くが、指導者による過酷な練習によるものであり、指導者の安全意識の欠除によるものです。
公立学校の教諭であれば、何をしても「公務員」であるという理由で、民事上の責任を免れられるのであれば、今後も同じことが繰り返され、同じように公務員個人の責任が問われないままとなってしまいます。
私たちは、最高裁判所が本件に真摯に向き合い、本件顧問の責任を明確に認める判決を下されることを求めます。
<不当な判例の壁を打ち破ることに、お力をお貸しください>
最高裁判所は一貫して公務員個人の不法行為責任を否定していますので判例変更がなされるのは,とてもハードルが高く、原告及び弁護団は,多くの方のご協力をいただきながら、これまで主張立証を充分尽くしてきました。しかし,それだけでハードルを乗り越えるのは極めて困難な状況にあります。
そこで,是非とも,皆様に署名へのご協力をお願いいたします。
最高裁を動かすには、皆様のお力が必要です!
是非、ご協力のほどを宜しくお願いいたします。
<署名のお願い>
以下より、署名用紙のPDFをダンロードいただき、弁護団までご送付をお願い致します。(まことに申し訳ございませんが、郵送料はご負担を賜りますようお願い致します)
署名用紙ダウンロード(PDF)
署名用紙は可能な限り、平成26年7月25日までに届くようお送りください。
また、以下のサイトでオンライン署名活動も行っています。
http://goo.gl/QaLpqf
<今後の活動スケジュール>
平成26年7月27日(日)午前 都内にて記者会見
平成26年7月27日(日)午後 都内にて集会
平成26年7月28日(月) 署名用紙を最高裁判所に提出予定
集会につきましては、詳細が決定しだいご案内させていただきます。
最高裁判所への署名提出日の翌日、7月29日は、康嗣の命を絶ったこの事故の起こった日から5年目となります。
どうか、皆様のご協力をお願い致します。
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本日(2014年4月30日)長野地裁において、検察審査会により強制起訴とされた柔道の元指導者に対して業務上過失傷害罪による有罪判決がでました。
検察が嫌疑不十分を理由に不起訴にした事件で、初めての有罪判決となりました。
私も傍聴をいたしましたが、柔道事故にとって、また、同様に検察審査会が一度目の起訴相当を出した我が家の事件についても、非常に大きな意味をもつことになる判決であったと思います。
詳細について言及をするのは後日とさせていただきますが、報道各社へのリンクを貼っておきます。
在京キー局はすべて、夕方のニュースで大きくとりあげました。
この判決の持つ意味の大きさを物語る報道量だと思います。
NHK
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140430/k10014127141000.html
日本テレビ
http://www.news24.jp/articles/2014/04/30/07250260.html
TBS
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2189352.html
フジテレビ
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00267687.html
テレビ朝日
http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000026031.html
他、報道量が多いのですべてご紹介しきれませんが、新聞各社が大きく報道をしていますのでご紹介しておきます。
朝日新聞
http://www.asahi.com/articles/ASG4X6QWHG4XUOOB01T.html
毎日新聞
http://mainichi.jp/select/news/20140430k0000e040184000c.html
産經新聞
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140430/trl14043018130006-n1.htm
検察が嫌疑不十分を理由に不起訴にした事件で、初めての有罪判決となりました。
私も傍聴をいたしましたが、柔道事故にとって、また、同様に検察審査会が一度目の起訴相当を出した我が家の事件についても、非常に大きな意味をもつことになる判決であったと思います。
詳細について言及をするのは後日とさせていただきますが、報道各社へのリンクを貼っておきます。
在京キー局はすべて、夕方のニュースで大きくとりあげました。
この判決の持つ意味の大きさを物語る報道量だと思います。
NHK
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140430/k10014127141000.html
日本テレビ
http://www.news24.jp/articles/2014/04/30/07250260.html
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フジテレビ
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00267687.html
テレビ朝日
http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000026031.html
他、報道量が多いのですべてご紹介しきれませんが、新聞各社が大きく報道をしていますのでご紹介しておきます。
朝日新聞
http://www.asahi.com/articles/ASG4X6QWHG4XUOOB01T.html
毎日新聞
http://mainichi.jp/select/news/20140430k0000e040184000c.html
産經新聞
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140430/trl14043018130006-n1.htm
2013年12月22日(日)に、全国柔道事故被害者の会の主催する第7回シンポジウム「スポーツ指導とハラスメント」を東京で開催いたします。
全国柔道事故被害者の会のシンポジウムでは、これまで、学校活動における柔道事故の発生件数や死亡事故の発生率を社会学的に、柔道事故と脳損傷との関係を医学的に考察し、警鐘を鳴らしてきました。
また、海外での柔道事故の事例や安全への取り組みを紹介し、日本における柔道の安全対策の必要性を訴えてまいりました。
幸いにして、柔道事故による死亡者は減少をしておりますが、重大な事故に繋がる暴力的な要素を含む指導の話は
当会にも後を絶たず入ってまいります。
昨今メディアでも大きく取り上げられるようになったスポーツ指導における各種ハラスメントの問題は、柔道に限らずスポーツ全体にとって非常に深刻な問題であると捉えております。
この事に目を背けては、本当の意味でのスポーツの安全性は確保できないものと考えており、この度この事を取り上げたシンポジウムを開催させていただきます。
今回のシンポジウムでは、柔道事故だけではなく、スポーツ指導の在り方について広く考えて行きたいと思っています。
多くの皆様のご参加をお待ちいたしております。
シンポジウムのお申し込み、及び詳細は下記リンクをご参照ください。
http://judojiko.net/news/1472.html
全国柔道事故被害者の会のシンポジウムでは、これまで、学校活動における柔道事故の発生件数や死亡事故の発生率を社会学的に、柔道事故と脳損傷との関係を医学的に考察し、警鐘を鳴らしてきました。
また、海外での柔道事故の事例や安全への取り組みを紹介し、日本における柔道の安全対策の必要性を訴えてまいりました。
幸いにして、柔道事故による死亡者は減少をしておりますが、重大な事故に繋がる暴力的な要素を含む指導の話は
当会にも後を絶たず入ってまいります。
昨今メディアでも大きく取り上げられるようになったスポーツ指導における各種ハラスメントの問題は、柔道に限らずスポーツ全体にとって非常に深刻な問題であると捉えております。
この事に目を背けては、本当の意味でのスポーツの安全性は確保できないものと考えており、この度この事を取り上げたシンポジウムを開催させていただきます。
今回のシンポジウムでは、柔道事故だけではなく、スポーツ指導の在り方について広く考えて行きたいと思っています。
多くの皆様のご参加をお待ちいたしております。
シンポジウムのお申し込み、及び詳細は下記リンクをご参照ください。
http://judojiko.net/news/1472.html
メディア各社にて報道をされましたように、昨日(2013年5月14日)大津地裁に提訴していました民事裁判に判決が下りました。
損害賠償請求裁判としては勝訴でした。
損害賠償額に関する原告の主張はほぼ認められた判決となりました。
報道で原告側の損害賠償請求額と判決での損害賠償額が違うことで、減額をされたと誤解をされている方もいるかもしれませんが、これは、スポーツ振興センターの災害共済給付金が損益相殺されての事で、実質的には請求額に近い判決です。
損害賠償請求裁判としては、十分な勝ち方であることは間違いありません。
ただ、私たちは、この裁判を損害賠償金を請求するための裁判とは捉えておりません。
事故の真相究明のための裁判であり、また、この裁判を通して同じような事故をなくすための裁判でした。
したがって、裁判所の申し渡す主文以上に、判決文の内容の方に重きをおいていました。
その意味において、非常に不満の残る、残念な判決であったと言わざるを得ません。
今回の民事提訴において原告側が大きな争点としたのは以下の2点です。
1.被告元顧問の過失の有無及び責任原因
2.北村学校長の過失の有無
判決文には、原告側が争点とした1番目の被告元顧問の過失に対し、以下の内容が裁判所判断として盛り込まれました。
被告元顧問には、
1.生徒の実態(発育・発達段階、体力・運動能力、運動経験、既往症、意欲等)に応じた合理的で無理のない活動計画を作成する義務
2.練習中に怪我や事故が生じないように、練習メニューに頸部のトレーニングを盛り込むなどして、生徒が確実に受身を習得することができるように指導する義務
3.部員の健康状態を常に監視し、部員の健康状態に異常が生じないように配慮し、部員に何らかの異常を発見した場合には、その状態を確認し、必要に応じて医療機関への受診を指示し又は搬送を手配すべき義務
を負っていたと認められる。
判決文において、練習計画や受身の指導、異常時の対応などについて指導者には義務があると認められた事は、評価に値することだと思っています。
さらに死因についても、判決文内において執刀医の供述をもとに、
1.死因となった硬膜下血腫が脳表と静脈洞をつなく架橋静脈の出血によって形成されたこと。
2.上記急性硬膜下血腫の発症時期は、当日の練習後であったこと。
3.康嗣に異常行動が認められた15本目の乱取り後の給水時において直ちに練習を中止し、専門医の診断と処理を受けることで救命の可能性が十分に可能であったこと。
と認定されました。
これらの認定に照らし合わせ、被告元顧問に対し、判決文では、
秦荘中学校で4年余りの柔道部顧問としての経験を有し、相当の柔道経験のある被告においては、15本目の乱取り後の給水時において康嗣に意識障害が生じている可能性を認識し得たものと認めらる。
したがって被告は15本目の乱取り終了時の異常行動を認識した時点で、頭部に損傷が生じた可能性を予見し、直ちに練習を中止させ、医療機関を受診するなどの指示をすべきであった。
しかし、被告は練習の中止を指示しないまま乱取り練習を続けさせ、少なくとも部員の健康状態を常に監視し、部員の健康状態に異常が生じないように配慮し、部員に何らかの異常を発見した場合には、その状態を確認し、必要に応じて医療機関への受診を指示し又は搬送を手配すべき義務があるところ、これを怠った過失があると認められる。
そして、上記の時点において直ちに練習を中止し、専門の脳外科を受診するなどしていれば、救命可能性はあったものと認められる。
とする内容が明記されました。
救命の可能性があったことに言及し、元被告の予見可能性が認められ注意義務違反があったと認められたことについても一定の評価はできると思っています。
しかしながら、元被告に対して前述の3つの義務があると認定しながら、実質的に過失の判断がされたのは、最後の3点目のみであり、他の2点については義務を負うとしながらも、裁判所としての判断を下してはおりません。
判決文において義務を負うと明記した以上、すべての点において過失が有ったのか無かったのかについての判断を下すべきであったと思っています。
さらにこの判決文の大きな問題点は、被告元顧問のこの3番目の過失を認定した事で、争点としていた北村学校長の過失の有無については、判断をするまでもなく、被告愛荘町に損害賠償責任があると結論づけた点です。
元顧問の過失認定によって愛荘町に損害賠償責任があると認められるので、校長の過失の有無については判断をする必要がないというのが裁判所の判断です。
私はこれは司法の怠慢であると思います。
責任の所在を明確にし、責任を負うべきものが責任を負う、そのことで事故の真相が解明されるのです。そして、その事で初めて事故の再発防止へと繋がるのです。
その事に踏み込まず、損害賠償責任が認められる過失が一点でもあれば、それですべての判断を下すという今回の司法判断は、日本全国で数多く起こっている学校事故、スポーツ事故の再発防止に何ら寄与しない表面的なだけの判決であったと言わざるを得ません。
また、被告元顧問の行っていた康嗣への日常的な暴力についても認めるに足る証拠がないとされ、それ以上の言及がされませんでした。
判決文では、被告元顧問が柔道部における練習中に部員の顔を「気合いを入れ」と称して平手で叩いたり、寝技をかけられている部員の尻を蹴ったりした事があったと、被告元顧問自身の供述から認められるとしています。
また、この事については、当時柔道部で一緒だった康嗣の同級生の男子生徒が暴力行為があったことを証言をしていただきました。
しかしながら、元顧問の暴力行為は認定されるが、康嗣への日常的な暴力があったかどうかについては証拠が足りないということにされました。1人の少年の強い正義感に根ざした証言を取り上げなかった大津地裁のこの判断には強い憤りさえ感じます。
また、昨年末より日本全国で問題とされている教師や指導者の「体罰」問題と照らし合わせても、元顧問による暴力を認定しながら、その事に対して何ら言及すらしなかったのは、社会の問題点に目を背けたものであると言わざるを得ません。
愛荘町においては、本年3月(2013年3月)においても、体罰を隠蔽したと思われても仕方のない事案が町立小学校で起こっています。
この事と、秦荘中学校の北村学校長及び藤野愛荘町教育長が、元顧問の暴力行為を認識しながら「指導であって体罰ではない」と主張し続けた事については、近日中に改めて記載をしていきます。
最後に、今回の判決における国家賠償法について記載をいたします。
国家賠償法とは、国又は公共団体の公務員がその職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を与えた場合、国又は公共団体がその被害者に対して賠償の責があり、公務員個人はその責任を負わないとするものです。
本件に照らし合わせれば、元顧問が故意又は過失によって康嗣を死に至らしめたとしても、柔道部の部活動中という職務中の事故であるから、元顧問に過失があったとしても、その賠償責任は元顧問が負うのではなく、愛荘町が責任を負うという事になります。
私達は、本件事故については、被告元顧問が康嗣の技能・体力に見合わない無理で無謀な練習を課し、疲労困憊で練習を継続しても練習効果が期待できないにもかかわらず、さらには康嗣の生命・身体に危険を及ぼす恐れがあるにもかかわらず練習を継続し、あろうことか最後には元顧問自身が返し技という初心者には危険な技で投げたという一連の行為は、部活指導中という公務員の職務中の行為とはいえ、本来の中学の柔道部の有るべき柔道指導の範囲を大きく逸脱した行為であり、指導という名の虐待であると主張してきました。
そして、これらの行為が、社会通念上の職務の範囲を逸脱している事は明らかであり、そのような場合でも公務員個人への賠償責任の追及ができないことは被害者感情を考慮すれば決して被害者の救済に繋がらないと主張してきました。
したがって、公立学校の教師であったとしても、故意又は重大な過失によって生徒の生命・身体に損害を加えた場合は、民法709条の不法行為責任が認められるべきであると主張をしてきました。
しかし、残念ながら今回の判決では国賠法の壁を破る事はできず、元顧問への請求は棄却をされました。
判例から予想は容易であったとはいえ、非常に残念です。
しかしながら、この事については、今後も様々な提訴事案の中で問題にされていく事になろうかと思います。
端的に言えば、公務員だからという理由で故意によって人を死に至らしめても、個人として賠償責任は無く、行政がその税金によって肩代わりをするというのは、納得のいくものではありません。
私立学校においては、同じ事があった場合、教師個人が賠償責任を負う事を考えれば、不合理であると言わざるをえません。
この国家賠償法による公務員の救済措置については、今後も社会として議論をされるべきことであり検討を重ねていくべき問題だと思っています。
長々と記載をいたしましたが、今回の裁判については勝訴判決が出たものの、上記の内容を考えた場合、納得のいくものではありませんでした。
今後の事については、また改めてお知らせをさせていただきます。
しかしながら、これで一審の判決は下されました。
最後になりましたが、一審での判決がおりました事、常に私たちの支えとなり力を与えていただいたW弁護士をはじめとする原告側代理人の皆様、勇気と信念をもって証言台に立っていただいた康嗣の友人S君とそのご家族、原告側の意見書にご協力をいただきました彦根市立病院のK医師、裁判の傍聴にきていただいた学校事故・事件を語る会の皆様、全国柔道事故被害者の会の皆様、康嗣の母親と妹の家族を影になり日向になり支えいただきました八王子中屋ジムの皆様、日頃からご支援をいただきました友人、知人、親戚の皆様、毎回報道をいただきこの事故を社会に問うていただいたマスコミ各社の皆様、まだまだ書き尽くせませんが多くのご支援とお力添えをいただきましたすべての皆様に、心より深く深く感謝を申し上げます。
ありがとうございました。
損害賠償請求裁判としては勝訴でした。
損害賠償額に関する原告の主張はほぼ認められた判決となりました。
報道で原告側の損害賠償請求額と判決での損害賠償額が違うことで、減額をされたと誤解をされている方もいるかもしれませんが、これは、スポーツ振興センターの災害共済給付金が損益相殺されての事で、実質的には請求額に近い判決です。
損害賠償請求裁判としては、十分な勝ち方であることは間違いありません。
ただ、私たちは、この裁判を損害賠償金を請求するための裁判とは捉えておりません。
事故の真相究明のための裁判であり、また、この裁判を通して同じような事故をなくすための裁判でした。
したがって、裁判所の申し渡す主文以上に、判決文の内容の方に重きをおいていました。
その意味において、非常に不満の残る、残念な判決であったと言わざるを得ません。
今回の民事提訴において原告側が大きな争点としたのは以下の2点です。
1.被告元顧問の過失の有無及び責任原因
2.北村学校長の過失の有無
判決文には、原告側が争点とした1番目の被告元顧問の過失に対し、以下の内容が裁判所判断として盛り込まれました。
被告元顧問には、
1.生徒の実態(発育・発達段階、体力・運動能力、運動経験、既往症、意欲等)に応じた合理的で無理のない活動計画を作成する義務
2.練習中に怪我や事故が生じないように、練習メニューに頸部のトレーニングを盛り込むなどして、生徒が確実に受身を習得することができるように指導する義務
3.部員の健康状態を常に監視し、部員の健康状態に異常が生じないように配慮し、部員に何らかの異常を発見した場合には、その状態を確認し、必要に応じて医療機関への受診を指示し又は搬送を手配すべき義務
を負っていたと認められる。
判決文において、練習計画や受身の指導、異常時の対応などについて指導者には義務があると認められた事は、評価に値することだと思っています。
さらに死因についても、判決文内において執刀医の供述をもとに、
1.死因となった硬膜下血腫が脳表と静脈洞をつなく架橋静脈の出血によって形成されたこと。
2.上記急性硬膜下血腫の発症時期は、当日の練習後であったこと。
3.康嗣に異常行動が認められた15本目の乱取り後の給水時において直ちに練習を中止し、専門医の診断と処理を受けることで救命の可能性が十分に可能であったこと。
と認定されました。
これらの認定に照らし合わせ、被告元顧問に対し、判決文では、
秦荘中学校で4年余りの柔道部顧問としての経験を有し、相当の柔道経験のある被告においては、15本目の乱取り後の給水時において康嗣に意識障害が生じている可能性を認識し得たものと認めらる。
したがって被告は15本目の乱取り終了時の異常行動を認識した時点で、頭部に損傷が生じた可能性を予見し、直ちに練習を中止させ、医療機関を受診するなどの指示をすべきであった。
しかし、被告は練習の中止を指示しないまま乱取り練習を続けさせ、少なくとも部員の健康状態を常に監視し、部員の健康状態に異常が生じないように配慮し、部員に何らかの異常を発見した場合には、その状態を確認し、必要に応じて医療機関への受診を指示し又は搬送を手配すべき義務があるところ、これを怠った過失があると認められる。
そして、上記の時点において直ちに練習を中止し、専門の脳外科を受診するなどしていれば、救命可能性はあったものと認められる。
とする内容が明記されました。
救命の可能性があったことに言及し、元被告の予見可能性が認められ注意義務違反があったと認められたことについても一定の評価はできると思っています。
しかしながら、元被告に対して前述の3つの義務があると認定しながら、実質的に過失の判断がされたのは、最後の3点目のみであり、他の2点については義務を負うとしながらも、裁判所としての判断を下してはおりません。
判決文において義務を負うと明記した以上、すべての点において過失が有ったのか無かったのかについての判断を下すべきであったと思っています。
さらにこの判決文の大きな問題点は、被告元顧問のこの3番目の過失を認定した事で、争点としていた北村学校長の過失の有無については、判断をするまでもなく、被告愛荘町に損害賠償責任があると結論づけた点です。
元顧問の過失認定によって愛荘町に損害賠償責任があると認められるので、校長の過失の有無については判断をする必要がないというのが裁判所の判断です。
私はこれは司法の怠慢であると思います。
責任の所在を明確にし、責任を負うべきものが責任を負う、そのことで事故の真相が解明されるのです。そして、その事で初めて事故の再発防止へと繋がるのです。
その事に踏み込まず、損害賠償責任が認められる過失が一点でもあれば、それですべての判断を下すという今回の司法判断は、日本全国で数多く起こっている学校事故、スポーツ事故の再発防止に何ら寄与しない表面的なだけの判決であったと言わざるを得ません。
また、被告元顧問の行っていた康嗣への日常的な暴力についても認めるに足る証拠がないとされ、それ以上の言及がされませんでした。
判決文では、被告元顧問が柔道部における練習中に部員の顔を「気合いを入れ」と称して平手で叩いたり、寝技をかけられている部員の尻を蹴ったりした事があったと、被告元顧問自身の供述から認められるとしています。
また、この事については、当時柔道部で一緒だった康嗣の同級生の男子生徒が暴力行為があったことを証言をしていただきました。
しかしながら、元顧問の暴力行為は認定されるが、康嗣への日常的な暴力があったかどうかについては証拠が足りないということにされました。1人の少年の強い正義感に根ざした証言を取り上げなかった大津地裁のこの判断には強い憤りさえ感じます。
また、昨年末より日本全国で問題とされている教師や指導者の「体罰」問題と照らし合わせても、元顧問による暴力を認定しながら、その事に対して何ら言及すらしなかったのは、社会の問題点に目を背けたものであると言わざるを得ません。
愛荘町においては、本年3月(2013年3月)においても、体罰を隠蔽したと思われても仕方のない事案が町立小学校で起こっています。
この事と、秦荘中学校の北村学校長及び藤野愛荘町教育長が、元顧問の暴力行為を認識しながら「指導であって体罰ではない」と主張し続けた事については、近日中に改めて記載をしていきます。
最後に、今回の判決における国家賠償法について記載をいたします。
国家賠償法とは、国又は公共団体の公務員がその職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を与えた場合、国又は公共団体がその被害者に対して賠償の責があり、公務員個人はその責任を負わないとするものです。
本件に照らし合わせれば、元顧問が故意又は過失によって康嗣を死に至らしめたとしても、柔道部の部活動中という職務中の事故であるから、元顧問に過失があったとしても、その賠償責任は元顧問が負うのではなく、愛荘町が責任を負うという事になります。
私達は、本件事故については、被告元顧問が康嗣の技能・体力に見合わない無理で無謀な練習を課し、疲労困憊で練習を継続しても練習効果が期待できないにもかかわらず、さらには康嗣の生命・身体に危険を及ぼす恐れがあるにもかかわらず練習を継続し、あろうことか最後には元顧問自身が返し技という初心者には危険な技で投げたという一連の行為は、部活指導中という公務員の職務中の行為とはいえ、本来の中学の柔道部の有るべき柔道指導の範囲を大きく逸脱した行為であり、指導という名の虐待であると主張してきました。
そして、これらの行為が、社会通念上の職務の範囲を逸脱している事は明らかであり、そのような場合でも公務員個人への賠償責任の追及ができないことは被害者感情を考慮すれば決して被害者の救済に繋がらないと主張してきました。
したがって、公立学校の教師であったとしても、故意又は重大な過失によって生徒の生命・身体に損害を加えた場合は、民法709条の不法行為責任が認められるべきであると主張をしてきました。
しかし、残念ながら今回の判決では国賠法の壁を破る事はできず、元顧問への請求は棄却をされました。
判例から予想は容易であったとはいえ、非常に残念です。
しかしながら、この事については、今後も様々な提訴事案の中で問題にされていく事になろうかと思います。
端的に言えば、公務員だからという理由で故意によって人を死に至らしめても、個人として賠償責任は無く、行政がその税金によって肩代わりをするというのは、納得のいくものではありません。
私立学校においては、同じ事があった場合、教師個人が賠償責任を負う事を考えれば、不合理であると言わざるをえません。
この国家賠償法による公務員の救済措置については、今後も社会として議論をされるべきことであり検討を重ねていくべき問題だと思っています。
長々と記載をいたしましたが、今回の裁判については勝訴判決が出たものの、上記の内容を考えた場合、納得のいくものではありませんでした。
今後の事については、また改めてお知らせをさせていただきます。
しかしながら、これで一審の判決は下されました。
最後になりましたが、一審での判決がおりました事、常に私たちの支えとなり力を与えていただいたW弁護士をはじめとする原告側代理人の皆様、勇気と信念をもって証言台に立っていただいた康嗣の友人S君とそのご家族、原告側の意見書にご協力をいただきました彦根市立病院のK医師、裁判の傍聴にきていただいた学校事故・事件を語る会の皆様、全国柔道事故被害者の会の皆様、康嗣の母親と妹の家族を影になり日向になり支えいただきました八王子中屋ジムの皆様、日頃からご支援をいただきました友人、知人、親戚の皆様、毎回報道をいただきこの事故を社会に問うていただいたマスコミ各社の皆様、まだまだ書き尽くせませんが多くのご支援とお力添えをいただきましたすべての皆様に、心より深く深く感謝を申し上げます。
ありがとうございました。
ニューヨークタイムズ紙とインターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙において日本の柔道事故問題が非常に大きくとりあげられました。
我が家の事例についても記事のトップに大きな写真入りで紹介されました。
「Japan Confronts Hazards of Judo」
過去においても、多くの海外メディアがこの問題を取り上げています。
日本の柔道事故の多さは、既に国際的に感心を集める問題である事に日本の柔道界が気づかれる事を願います。
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過去においても、多くの海外メディアがこの問題を取り上げています。
日本の柔道事故の多さは、既に国際的に感心を集める問題である事に日本の柔道界が気づかれる事を願います。