2009年7月29日滋賀県秦荘中学校の柔道部で顧問に投げられた直後に意識不明になり、約1ヶ月後に急性硬膜下血腫で死亡した村川康嗣(当時12歳)の柔道事故の真実を明らかにし、それを多くの方に知ってもらうためのブログです。
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大阪のシンポジウムの閉会の挨拶で、ある柔道事故のお話をさせていただきました。
昨年の11月に静岡で行われた学災連のシンポジウムでお会いすることができたご家族の話です。

今から40年近く前にある柔道事故が起こりました。

当時高校一年生であった男子生徒が、課外活動の柔道で教官に連続技の指導で投げられた後、意識不明となり、急性硬膜下血腫で遷延性意識障害(植物状態)になったのです。

「投げはこうやるんだ」と教官に、内股から大内刈に行く連続変化技の指導を受けていた生徒は、内股と大内刈で教官に2回投げられた後、他の生徒と組んだ途端に「頭が…」と言って崩れ落ちたのだそうです。
運ばれた病院で手術をうけ、一命は取り留めましたが遷延性意識障害になられました。

当時、教官は病院の医師に「慢性の病気か」と質問をしたのだそうです。医師は、「3~5分くらいの急激な衝撃による損傷である」と答えたといいます。また、術中所見では、橋静脈破裂による急性硬膜下血腫が認められ、橋静脈の近傍には非常に小さい脳挫傷が存在していた事がわかっています。

学校は、「教官が投げた後、次の生徒と組んだときに倒れたのだから、加害者は教官ではない」として責任を認めませんでした。そして、級友、すべての目撃者の態度が変わり、見舞いにも来なくなったのだそうです。

ご家族は、真実を究明するために民事提訴をおこされました。

裁判で教官は、「内股は引き技だから頭部を打つことはない。大内刈で男子生徒を崩したが投げてはいない」と投げた事自体を撤回し、自分の責任を否定しました。
医師は「外見上頭部に外傷の所見はなかった」とし、級友は「見ていなかった」と証言をしました。
現場検証が行われましたが、事故当時の目撃者を1人も立ち会わせず、教官が自分の主張通りの実技をやってみせただけだったそうです。

医師の証言で、硬膜下血腫が外傷性であることは明らかになりました。
教官の次に組んだ級友は、「ふらふらとはじめから様子が変だった。頭が・・・と言って倒れた」と証言しましたが、教官の言動に対しては、「見てない」「記憶していない」として、一切答えませんでした。

第一審の地裁判決では、教官の投げによって頭部外傷を負ったという因果関係は認めたましたが、「学校の指導は適切」「自由練習の段階で技をかけたのを違法とは言えない」「過失はなかった」として原告が敗訴しました。

ご家族は控訴をされましたが、二審の高裁は控訴を棄却しました。

一審同様、過失認定は否定されました。
そのうえ、亡くなった生徒が畳に頭部を打ち付けたという目撃証言が得られない事、さらに以下の実験結果を採用し、一審で認められていた投げとの因果関係も否定したのです。

この裁判の過程において、被告である国は、「外傷性硬膜下血腫は直接頭を打たなくとも、まれに起こり得る」という、アメリカのサルを用いて回転イスを急速に回す実験の結果を提出し、裁判官はそれを採用しました。
サルを回転椅子に固定して、椅子を急速に回すと、その衝撃だけで外傷性硬膜下血腫が発症するという実験です。

高裁は、この実験結果から、「頭部に直接打撃以外の『衝動』によって、急性硬膜下血腫発症の医学的可能性があることが判明した」として、「頭部に加えられた外力であるとの推認をすべき限りではない」として、教官の投げ技との因果関係を否定したのです。

最高裁までというお気持ちはあったと伺いましたが、生徒のおかあさんが、もうやめましょう、と言われたのだそうです。
高裁での控訴棄却が確定しました。

男子生徒は、それから25年間、病院のベットでずっと意識が戻らないままでした。
25年間、ご家族の介護を受け続け、そして亡くなられました。

40年近く前に起こった事故の話です。

この話を聞いて私が衝撃を受けたのは、40年近く前にすでに加速損傷で硬膜下血腫が起こり得る事が明らかにされていた事です。
サルを回転椅子に座らせる実験、これで橋静脈が破断し発症する硬膜下血腫は、加速損傷によるものです。

40年前、すでに柔道事故の裁判において、直接頭部に打撃をうけなくとも、加速損傷によって硬膜下血腫が発症することは明らかにされていたのです。
この事をさらに検証していけば、直接頭を打たなくても、柔道技による投げのスピードで硬膜下血腫が発症することは明らかにできたと思います。
当時は、ただ、「直接頭を打つ事以外に事故の原因はない」と極めて短絡的に考えられていたのでしょう。残念です。

そしてこの時から40年、この国では何一つ柔道事故の実態は変わらなかったのです。

学校は責任を否定し続け、指導者は「頭は打っていない」と言い張り、事故に対する調査や検証が何もされないまま、ただ責任回避の議論だけがされてきたのです。
40年前に解っていた加速損傷も、その後なんの検証もされないまま、ずっと放置されてきたのです。
そして、毎年4人以上の子どもの死亡者を出し続け、毎年10人以上の障害者を出し続けたのです。
どこかで、だれかが、手を打っていれば、これほどの子どもがその後も犠牲になることはなかったのです。

これがこの国の柔道事故の実態です。


昨年の11月、この男子生徒のお父さんにお会いしました。
高齢で皆さんとお会いする機会もこれが最後でしょうとおっしゃっていました。

お父さんは、最後に、こう話されました。
「(裁判のために)田畑を売って、すべてを無くして、残ったのは物言わぬ息子だけでした」

私は、涙で語るその男子生徒のお父さんに、この時の裁判で国が出したサルの実験は、今は「加速損傷」として柔道事故で多発する脳損傷の原因の一つとして認知されている事を申し上げ、そして、後に続く私達への道筋をつけていただいたことに感謝しますと申し上げました。
それを申し上げるだけで精一杯でした。


「すべてを無くして、残ったのは物言わぬ息子だけでした」

40年前の柔道事故、その被害者の父親が発したその言葉を、私は一生忘れません。


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【2011/01/19 13:08】 | 柔道事故
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全国柔道事故被害者の会の第3回目のシンポジウム「柔道事故の撲滅を願う」が大阪で開催されました。
会場一杯の約100名のご参加をいただきました。関西で初めてのシンポジウムということで多くのマスコミの方にもお越し頂き、当日のNHKや毎日放送のニュースや本日の新聞などで報道をいただきました。

また、全柔連医科学委員会の副委員長である二村雄次さんを初め、多くの柔道指導者の方にもご参加いただきました。

シンポジウムの詳細については、柔道事故について継続して報道していらっしゃる以下のサイトの三上記者の記事に詳しく掲載されていますのでご参照ください。
http://www.janjanblog.com/archives/28938

このシンポジウムで訴えたかった事についてはまた日を改めてお伝えしますが、本日は、シンポジウムで妹の発表した内容について、全柔連の医科学委員会副委員長の二村雄次さんが高い関心を示していただいた事をお伝えしたいと思います。

妹は康嗣の事故の経緯を入部当初から時系列に話し、そしていかにして柔道事故を防ぐかについて話しました。

詳細は、昨年6月の妹の講演内容がやはり先に紹介した三上記者の記事に掲載されていますのでご参照ください。
大阪のシンポジウムでも同様のお話をさせていただきました。
http://www.janjanblog.com/archives/6104

シンポジウム終了後に二村雄次さんからお声をかけていただき、良い講演内容でしたので今日の原稿をいただけませんか、と言われたのだそうです。
妹は持っていた原稿をそのまま差し上げたそうです。

愛知県がんセンター総長でもある二村雄次先生は以前より柔道事故に高い関心を持ち、事故を無くすために尽力をされているという話を人づてに聞いておりました。
また、以前中日新聞の以下の記事において「医療事故のように、第三者が入った事故原因究明が不可欠」と話されています。
http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2010111802000066.html

これはシンポで妹が柔道事故を防ぐには、第三者による調査機関が事故を調査、分析する必要があること、そしてその調査手法、調査項目の確立が必要であると訴えた事と共通します。
妹の原稿では、調査機関はどのようなメンバーで構成されるべきなのか、また調査内容は、どのうような項目について調査をするべきなのか、より具体的な提言を行っています。
この事にご関心をいただいたのではないかと思います。

質疑応答でも加速損傷について脳外科の野地先生に質問をされており、未発達な子供の脳にはより強い衝撃が加わる可能性があるのではないか、という事を聞いてらっしゃいました。

また、妹だけでなく、他の被害者家族の方にもお声をかけていらっしゃったようです。
全柔連の中に、このように柔道事故を真摯に考え、そのために私たちのシンポジウムに足を運び、真剣に事故撲滅を考えていただいている方がいる事に希望を感じました。



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【2011/01/17 00:48】 | 全国柔道事故被害者の会
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明日の土曜日(1月15日)大阪で全国柔道事故被害者の会の第3回目のシンポジウムが開かれます。

関西での初めてのシンポジウムの開催ですので、滋賀県下のすべての教育委員会、すべての中学校、柔道部のあるすべての高校に案内をお送りしましたが、残念ながらお送りした滋賀県下の教育機関からのご参加は現時点ではありません。

愛荘町長、愛荘町教育長、秦荘中学校長にもお送りしておりますが、残念ながらご参加されないようです。

もちろん、ご都合もあるのでしょうが、中学生が死亡するという大きな事故が起こった県の教育に関係する方には是非ご参加をいただきたかったと思いました。

27年間で110人の死亡者。
26年間で261件の後遺症の残る障害事故。

これがこの国の学校柔道の現状です。
学校の柔道だけで、年間で4人以上の子どもが柔道で死亡し、年間で10人以上の子どもが柔道による事故で障害者になっています。
日本より柔道人口の多い、フランスやドイツで死亡事故がゼロである事を考えると、やはりこの数字は異常です。

武道の必修化がはじまりますが、何をおいても優先されるべきは子どもの命です。

全柔連教育普及委員会委員である東京都八王子市立打越中学校の田中裕之校長は、昨年11月の中日新聞の記事(http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2010111802000066.html)で「授業に柔道を取り入れている学校で、死亡事故はない」と答えていらっしゃいますが、これは間違いです。

上記の110人の死亡事故のうち約12%、14人が柔道の授業中に死亡しています。
被害者の会にも授業中に亡くなったお子さんのご家族の方がいらっしゃいます。

さらに恐ろしいのは、261件の障害事故のうち約30%の77件が授業中に発生しているということです。
後遺症の残る障害事故の3割が授業中に起こっているのです。武道必修化の前に、安全対策を講じることが急務です。

柔道事故の知識を正しく持つことこそが、事故の撲滅に繋がります。

多くの教育機関の方、柔道関係者の方からにご参加いただきたいと思います。
参加申し込みはこちらより
http://judojiko.net/news/421.html



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【2011/01/14 09:25】 | 全国柔道事故被害者の会
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1月10日に和歌山で柔道事故が起こりました。

以下産經新聞より引用いたします。

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 10日午前10時15分ごろ、和歌山市中之島の柔道会館で、けいこ中だった県立和歌山商業高校1年の男子生徒(16)が、投げられてあおむけになった際に別の生徒の足が顔に当たるなどし、意識不明の重体となった。男子生徒は脳内出血で、緊急手術を受けて一命をとりとめたという。
 和歌山県柔道連盟などによると、男子生徒は連盟主催の寒げいこに午前6時半ごろから参加。8時過ぎからは市内の学校と合同練習をしていたが、けいこ中に投げられてあおむけになった際、別の投げられた生徒の足が顔を直撃した。
 男子生徒は立ち上がったが、洗面所に向かう途中で倒れて意識を失ったという。 
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http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/110110/crm1101101944007-n1.htm

記事では一命をとりとめたとありますが、現在も意識不明の状態だと聞いております。

当日は複数の高校が集まって練習をしていたのだそうです。
どれくらいの広さの道場で同時に何人の生徒が練習をしていたのかを解明する必要があり、当然ながら主催者及び指導者の安全配慮義務、危険回避義務が問われるところだと思います。



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【2011/01/13 10:58】 | 柔道事故
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フランスのAFP通信社より日本で柔道事故が多発しているニュースが全世界に向けて配信されました。
この記事の冒頭で康嗣の事故が取り上げられています。

詳細は、「中学校での武道必修化、子どもの柔道事故に懸念」というAFPの以下の記事を参照ください。
http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2781906/6629423

この記事では、日本の柔道のあり方の問題点がいくつか指摘されています。
また、日本より3倍も柔道人口の多いフランスでは死亡事故が発生していない事も記載されています。
全国柔道事故被害者の会が、シンポジウムで発表した内容がこの記事でも裏付けられていることになります。

また、全柔連の新原勇三氏が柔道指導者を擁護する発言をしていますが、何の裏付けもない発言をされるのもいかがなものかと思います。
虐待に近いしごきのような練習が事故に繋がっている事は、過去の事故事例を冷静に見つめれば自ずと解ることです。
氏が何を根拠にこのような発言をされているか機会があればお伺いしたいと思います。

日本で多発している柔道による死亡事故が、欧米各国で発生していないことは全国柔道事故被害者の会の調査でも明らかです。この事は、日本の柔道のあり方に問題があることを指摘しています。

フランスだけでなく、日本より柔道人口の多いドイツでも同様に死亡事故は発生していません。
1月15日に開催する大阪でのシンポジウムでも詳しく報告いたします。

大阪のシンポジウムにも多数の方のご参加をお待ちしています。
参加申し込みはこちらから

このニュースは世界には1月2日に配信されており、世界各国でも大きく取り上げられています。一部のリンクを掲載しておきます。
http://onehd.com.au/onehd/newsarticles/Judo-Judo-deaths-alarm-Japanese-parents-TX-PAR-KXP49.htm

http://www.theage.com.au/world/school-judo-deaths-prompt-protest-in-japan-20110102-19d03.html

http://www.chinadaily.com.cn/cndy/2011-01/06/content_11800956.htm


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【2011/01/09 22:45】 | マスコミによる報道
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昨年、2010年だけで6人の小中高生が柔道事故で亡くなりました。2009年は康嗣を含め5人の小中高生が亡くなっています。
直近の2年間で11人もの子どもが柔道で命を落とした事になります。

死亡原因の大半が脳損傷です。
そして、柔道による脳損傷では直接頭を打たなくても回転加速によって発症する「加速損傷」という事例が非常に多いのです。
加速損傷は直接頭を打ち付けなくても発症するのですから、いくら引き手を引いて頭を打たなくしていても、いくらベッドギアなどで頭を保護していても、防ぐ事はできません。

柔道事故にはこのような明確な傾向があります。
この傾向を研究し、分析することで事故は防げるものと考えます。
武道必修化を前に、早急な対策をとらなければいけまぜん。

全国柔道事故被害者の会では、来る1月15日(土曜日)に大阪で第3回目のシンポジウム「柔道事故の撲滅を願う」を開催します。

柔道事故の傾向、回転加速による脳損傷、被害者家族の話、海外で死亡事故が起こっていない事などを発表します。
柔道の指導者の方をはじめ、教育現場の方、医療現場の方に広く実態を知っていただきたく思っています。

ぜひご参加ください。
参加申し込みはこちらから。
http://judojiko.net/news/421.html



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【2011/01/05 11:26】 | 全国柔道事故被害者の会
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